2014年12月1日月曜日

雑誌会11/28

今週の雑誌会の一人目登板はM1松迫君で、Chen et al. Butanol tolerance regulated by a two-component response regulator Slr1037 in photosynthetic Synechocystis sp. PCC 6803. Biotechnology for Biofuels 2014, 7:89 でした。1-ブタノール、イソブタノールは炭素数が4つのアルコールで、エタノールよりも高熱量なバイオ燃料として、また、バイオポリマーの原料としての利用が期待されています。一方、大腸菌やシアノバクテリアなどの扱いやすい宿主微生物はブタノールを合成する遺伝子をもっていません。そこで、クロストリジウム属の微生物などから生合成遺伝子を移植して、ブタノール生産可能な微生物の育種が盛んに行われています。一方、高濃度のブタノールは微生物にとって毒でもあることから、宿主微生物をブタノールに強くするように鍛える、耐性を持たせる方法の研究も並行して行われています。この論文はSynechocystis PCC6803というシアノバクテリアがもつTwo-component signal transduction systemに着目し、ヒスチジンキナーゼをコードするslr1037遺伝子の破壊株がブタノールに対して「弱く」なる事を示しています。さらに、変異株のプロテオーム解析からどのようなタンパク質の含量が変化したのかを解析し、中心代謝、シグマ因子、窒素同化、アミノ酸輸送をになうタンパク質含量に変化があったこと示しました。耐性という性質は普通、多数の遺伝的要因が関与する量的形質です。また、シグナル伝達系はどうやらかなり「混線」しているようだというのは多くの研究が示唆するところです。slr1037欠損変異株の変化を一網打尽にできる点はすごいですが、国語入試問題必勝法的に要約すると「色々あった」うち、なにがブタノール耐性にもっとも寄与してるのか調べるのは大変そうでもあります。
二人目はM1の大橋君の発表で Wu et al. Metabolic engineering of Escherichia coli for efficient free fatty acid production from glycerol Metabolic Engineering 2014, 25:82-91 です。脂肪酸を高生産する大腸菌を構築するにあたって4つの遺伝子破壊がどのくらい効果があったのかを実際に実験で実証して見せています。代謝シミュレーションの結果との比較は行われていませんが、実際のところどうなのか気になるところです。
二人とも発表上手でした。