2015年1月25日日曜日

GFP発現酵母株を作るかなり簡単な方法

出芽酵母に蛍光タンパク(GFP)を発現させたかったのです。そこでもっとも簡便な方法はなにかなといろいろ調べてみたところ、岡山大学の守屋先生のホームページで「Gap-Repair Cloning」法を発見したので試してみました。Gap-Repair Cloning法とは出芽酵母が「組み換え修復機構(一般には相同組み換え)」活性を持つ事を利用して、25bp以上の相同領域を持たせたDNA断片をそのまま酵母に導入し、酵母細胞内で断片を結合させてプラスミドを構築する手法です。今回行ったのは

1.pGK426(2ミクロン型の複成開始点およびURA3マーカーを持つプラスミドベクター、神戸大学の石井先生作成)をSalI, EcoRIで切断し、念のため電気泳動後に精製したもの。1.5時間もあれば作成可能。
2.pUA66 (GFP遺伝子をコードしている)を鋳型としてGFP遺伝子のORF部分をPCRで増幅したPCR反応液。その際、PGK1プロモーターの3'末端領域およびPGK1ターミネーターの5'末端領域の50bpがそれぞれ、GFP遺伝子の上流と下流に付与されるようにプライマーを設計した。今回は念のため50bpの重複領域を設定したが25bpくらいまで減らせる(=コスト削減)らしい。4時間もあれば作成可能。
3.その日のうちに(1)と(2)をそのまま酵母YPH499株に酢酸リチウム法で形質転換、選抜培地にまく。
4.3日後には大量のコロニーが得られた。
5.5コロニーを選んでコロニーPCRを行ったところPGK1プロモーターとPGK1ターミネーターの間にGFP遺伝子が挿入された事を示すバンドが5株とも観察された。

6.コロニーをかき取って顕微鏡で観察したところ、GFPの蛍光が見られた。

白黒写真でもうしわけありません。

大腸菌を一切使わず、シーケンスのチェックもヌキではありますが作り始めて3日後にはできました。またすごく形質転換効率が高くておどろきました。
Gap-Repair Cloning法の利点と欠点は守屋先生のページにて議論されております。出芽酵母のこういう便利な特性を活用するとあっとおどろく事ができるかもしれませんね。


2015年1月23日金曜日

中心代謝のフラックスレベルでの理解に向けて

先日、1/20に日本生物工学会代謝工学研究部会第3回シンポジウム「中心代謝のフラックスレベルでの理解に向けて」を開催しました。部会員のみなさまに加え、様々な分野から多くのかたにご参加いただき、まことにありがとうございました。


トップバッターは理化学研究所環境資源科学研究センター研究員の小山内崇先生より、「代謝工学を目的としたラン藻の炭素代謝改変法について」という演題でご講演いただきました。グローバルレギュレーターの発現量を変えることで、光合成微生物(シアノバクテリア)の中心代謝フラックスをドラスティックに制御する研究の基礎から応用まで多岐にわたる話題を提供していただきました。


続いて大阪大学大学院情報科学研究科清水教授より「中心代謝フラックス解析法の基礎」、松田より「トレーサー実験と13C代謝フラックス解析の違い」、戸谷特任助教より「代謝フラックス解析の実際<物質生産微生物、光合成微生物、培養細胞>」という代謝フラックス解析の基礎から、原理の説明、実例にいたる技術よりの濃いい演題でセッションを進めさせていただきました。また、最後には参加者の方からも数多くのコメントをいただき、大いに意見交換を行う事ができました。




終了後は懇親会にてさらなる情報交換を行いました。今後も日本生物工学会代謝工学研究部会では代謝工学研究の発展に向けた活動を行って参りますのでどうぞよろしくお願いします。また、こんな企画やってほしいなどご意見ご要望がありましたらどしどしお寄ください。